「大使閣下の料理人」25巻完結

料理漫画というのは、ミステリーの要素で構成されているように思える。
まず、テーマとなる謎(例えば、ある食材を使わずに料理をする、とか食わず嫌いを治すであるとか)が提示され、それに対して主人公や周りのキャストが悩む、そして意外なところから現れるヒントというものが読者に与えられ、最後に謎を解くように結果としての料理が出される。
おそらく例外はあるだろうが、構成としてはとても似ている。
そして、それに付け合わされるものは、いわゆる浪花節的ないい話の人情物語であったりする。この料理と人情というのは、トリュフとジャガイモくらい相性がいい。
結果、料理漫画は、ある種のテンプレートというべきものにのっとって描かれることになる。
そのまま描かれれば凡百の心を打たないマンガになってしまうが、ここに隠し味としてプラスアルファをいれることにより、料理(マンガ)の質がピシッと決まる。
このマンガに関しては、政治、外交、国際問題などの少しだけアダルティなテーマとなっている。
しかし、これが噛み砕いて説明されているので、難しく頭をひねることなく、おいしい料理を食べるようにすんなりと飲み込める。
出てくる料理は、高級なものが比較的多く、レシピマンガとしては、それほど役にはたたないかもしれないけれども、それでも、読後感はなかなか味わい深い。
まぁ、この手の定番として、ご都合主義ではあるものの、その辺も特に嫌味にならない程度に描かれているあたりに作者の才能が伺われる。