「夏子の酒」12巻完結

究極の日本酒造りを目指し、天才的な感性を持つ女性と、その周りの人間模様を描いたマンガ。
農家問題、農薬、醸造などの問題を現実に提起していく、しかし、その問題が一つずつクリアされていくたびに、マンガ的なカタルシスを感じさせる。
そのあたりの事情は、マンガであるから若干ご都合主義ではあるかもしれないけれども、それでも、その問題に対して一つの例として答えを出してゆく。
問題は、この日本という国において、全般的に起きていることが描かれる。その中で、主人公が立ち向かうのは、いわゆる自分の町という単位でしかない。
しかし、それでいいのだと思う。
私たちは、世界中に飢えている人間が死んでいることを知っている。
所詮、私たちは大きな問題に対して無力だ。
だけど、なにもしないよりはいい。
世界が救えないからといって、自分の半径1mも放棄する必要はないのだ。
マンガの中の主人公は、マンガ的に描かれているので無力ではない。それでも、かなわない。
だからといって、私たちが、世界に対してかなわないわけではないのだから。