「西洋骨董洋菓子店」4巻完結

癖のあるキャラクターたちがケーキ屋という舞台でストーリーを進めていく。
そこには、リアリティは描かれない。
『天才』というラベルが貼られたキャラクター、細かい営業上の金銭的問題も描かれず、キャラクターたちは休日もなく働き、ストーリーが進展する。
しかし、このリアリティのなさは、ひょっとしたら作為的なものなのではないかと感じたりする。
とりあげられるストーリーの核となるものが、幼児誘拐というもので、そのトラウマを皮切りに、あらゆる人間たちの精神的歪みがつみかさなり物語が形成される。
実際にリアリティをもって描かれたら、これはとてもつらくなるのではないだろうか。
あえてそれをせずに、綺麗な上澄みの要素だけを救い上げて描かれる物語。
それはまるで、力仕事であり、体育会系のノリである製菓というものの部分を描かずに、皿の上に綺麗にデコレーションされたケーキを見せられているようだ。
読者は、製菓の現場など味わわなくてもよい、ただ、皿の上にある甘く美しい至福だけを味わえばいいのだ。
そういうような意図が組んで取れるような気がする。
一つだけ、リアルに解説がされてある部分、それはケーキの説明に当てられる部分、それはまるで白いケーキの上にのったミントの緑のように彩を与える。