「エマ」8巻完結

メガネで無口なメイドが主人公という、どう説明しても誤解されそうな内容のマンガなのだけれども。
これが、とてもよい。読者に媚びることなく、丁寧に世界観や人物描写、時代背景などを描いているために、不必要な(おそらく一部の人間にとってはもっとも必要である)邪念のようなものがないのだ。
それは作者の作品やキャラクターに対する愛情を感じさせる。
物語自体は、とりたてて珍しいといわれるものではない、しかし、その描写によって引き込まれ、いつしか自分が物語の中に入り込んでいることに気づかされる。
こういう、執拗なまでに丁寧な愛情というのは、おそらく日本人が一番なのではないかと思われる。
書きそびれたが、19世紀のイギリスを舞台に話は展開する。
しかし、イギリス人は、これほどまで美しくイギリスの世界を切り取ることはできないだろう。日本の、それもマンガであるということに、これは意味があるのだと思う。
物語が、大団円を迎えるにあたり、私たちは、ほっと息をつくと同時に、この世界から離別しなくてはならないというなんとも寂しい気持ちを迎える。
キャラクターに感情移入するのではなく、その世界に、もう一人の自分の存在感を感じられる。そんな素晴らしい作品。